はじめに
東京税理士会国際部長・訪中団団長 高橋省二
本会国際部では、2001年11月21日から25日まで中国税制及び税務代理制度研修視察を行いました。 視察団は、波多野本会顧問を名誉団長に、二重作副部長を事務局長として総勢16名で構成され、コーディネーターとして、当部委員である内田俊彦会員にお願いしました。
今回の視察の目的は、中国のWTO加盟による中国国内関連法規の整備や見直し、 特に税制について調査し、また我が国の企業においても中国に対する関心が高まっていることなどから、 投資、税務代理制度及び注冊税務師事務所等の実態について調査研究することでありました。
本会では中国国家外国専家局と平成6年12月2日に北京で合意書を締結し、また中国税務諮詢協会とは協定書を締結しておりますが、 合意書等締結から7年が経過しているにもかかわらず、訪問に当たって熱烈なる歓迎を受け、WTO加盟による両国の役割、 日本の税理士会に対する期待等について意見交換を行ってまいりました。
中国側では、合意書等に基づく具体的な内容の検討を望んでおり、中国の各機関或いは団体との単なる友好関係の維持のみならず、 今後は合意書等に基づき、WTO加盟による中国市場の国際化等に対応した税務関係者の養成等のため、 税務専門家の中国への講師派遣或いは中国側から派遣される税務関係者を日本の研修機関へ受入れする等具体的内容について協議していく必要性を認識し、 更に実のある関係を構築する時期が来ていると痛感致しました。
なお、中国はWTO加盟により、関税や投資規制を段階的に緩和し、WTOルールの遵守を進めると表明しており、 特に税務行政面における対応については透明にしなければならないということから、公平・公正・公開を税務機関の行動規範とする考え方ができあがっています。 特に今まで納税者は義務だけを負っていると見られていたが、 今後は法律にしたがって納税者の権利を考え、税務行政の執行方法等を納税者によく説明することになるとのことでありました。
また、新たに発足する中国注冊税務師協会は、現行の中国税務諮詢協会が母体となり、 中国国家税務総局注冊税務師管理中心が移管される予定でありますが、業務内容は今までと同じであり、 本会との友好協定は更改せずそのまま存続すればよいのではないかとのことであります。
今後は、中国全省に協会を設立し北京がその中心としての役割を担っていくとともに、 協会としても出版物を提供するなどのサービスの向上に努め、ゆくゆくは会費の導入も視野に入れるとのことであります。
今回の視察では、過去の海外視察と同様ですが、数回におよぶ検討会や事前勉強会を行い、 また現地では過密なスケジュ-ルにもかかわらず団員一人一人には大変熱心に研修に取り組んでいただきました。 おかげで有意義な視察を行うことができたのではないかと自負するものであります。
今後、この成果が我が国における税務行政、税理士制度の改善すべき点の更なる調査・研究・具現に寄与することを期待し、 また、会員各位の税理士業務の国際化に関する一助となれば幸いであります。
最後に、本視察報告書の作成にあたり、団員各位から多大なご協力をいただきました。 ここに改めて感謝を表する次第であります。