中国税制改革の一見
中国は長期的経済発展のため各種の改革を進めています。税制の改革、税務代理制度の導入はその一つであります。今回、国家外国専家局、国家税務総局、税務諮詢協会、注冊税務師事務所を訪問し、その後の実態を調査しました。当方の執拗なまでの質問に対し、ざっくばらんにかつ詳細な説明を受けることができました。主張すべき点、現状の不備な点、即答できない点などがきちんと整理されており、新体制が着実に進んでいることを実感しました。日本から学びながら、日本より進んでるいる点も見受けられました。反面、中国はWTO加盟を機に新たな課題が発生しており、今後バランスの取れた発展を続けられるか正念場を迎えていると感じました。印象に残った点は次のようなものです。
1.税務諮詢協会の費用
職員の給料や協会の家賃は国が負担している。最初耳を疑ったが繰り返し説明があり、同協会は社会主義経済の枠内において、国民の納税意識を高めることを第一の目的とすることからすれば理解できる。
2.納税者の権利
2001年5月1日より納税者の権利と国の義務を定めた新法ができた。今後、官僚の国家権力意識をサービス精神に変えるのは最大の課題であるとの説明があった。
3.税務師の倫理
これに関する法律の規定はない。中国ではものの考え方や生活様式が地域によって異なり、経済格差も大 きいので、倫理の問題は地方の管轄に委ねるほうがよいだろうとの説明があった。
4.試験制度
一時存在した税務署出身者に対する優遇措置はなくなった。注冊会計士にも特例がなく、注冊税務師の試験を受けなければ注冊税務師にはなれない。
5.研修制度
研修を受けないと翌年注冊税務師の登録ができない。国税を徴収することが注冊税務師の大切な任務であるから、研修科目には税収徴収管理法が含められている。
6.企業進出
低賃金をあてにして一儲けしようと考えて中国に進出するならば、手痛い目にあうだろう。WTO加盟により中国経済はますます複雑化すると同時に困難な面もでてくる。いいパートナーを見つけ、相手に対していかに 貢献するかを第一に心がけることが成功の秘訣である。
7.人治国家
中国は人治国家と言われるが、WTOに加盟し、そしてどんなに法律を整備しようとも、その人治国家の本質は容易に変わらない。因みに、中国が外国の専門家を受け入れる場合に、どんな資質の人材を求めるかという質問に対し、第一に緊密な友好関係を築き、維持することができる者と回答された。これは肝に銘じておく必要がある。
(村守 明夫 記)